私の生まれ育ちました街には花柳界があります。
「向島」の花柳界は、新橋や赤坂、神楽坂ほど広く伝わるネームバリューは無いかも知れませんが、私の子供頃は黒塗りの車がギッシリと並び、華やかな時代を記憶しております。
今年になり老舗料亭の「水の登」さんが長い歴史にピリオドを打ちました。
先代の旦那さんや女将さん、姐さん方のお陰で今日のBeeがあったと言っても過言ではないと思います。
老舗料亭の閉幕に花柳界は時代の流れを感じながらも、長年に渡り看板芸者としてご活躍為さって参りました「牡丹」姐さんが、女将として『向じま 千穂(せんすい』を先月末に開業なさいました。
昨日はお披露目の御招待を頂きました「下町三人衆」でお座敷に上がらせて頂きました。
下町イタリアンの巨匠・Tomtom関口シェフ
浅草の黒豹こと・DORAS中森
そして私の三人であります。
以前より「いつかは一緒にお座敷に上がろう」と、弟子のDORAS中森と思い描いておりました夢が実現することが出来ました。
「やっぱり下町魂は着物?」
そう話しておりました私達二人は営業前ではありますが和装でお邪魔させて頂きました。
下町イタリアン巨匠のシェフもお座敷は初体験と仰いながら、さすがボスの貫禄ですね…!
さてさて、「向じま 千穂」さんのお料理が運ばれて参りました。
板長さんは40歳、弟子のDORAS中森と同世代であります。
日本料理の道に入り待望の板長に抜擢された向島花柳界であります。
正当な味わいに加え、繊細な仕事を加える技法は、伝統という長き流れに正面から向き合い、自らの「仕事」を拘るバーテンダーと同じ心構えに感じられます。
お造りで器に敷かれた大根は、一見すると大根の輪切りなのですが…、桂剥きにした大根を元通りに包み輪切りにする技法『年輪大根』だそうです。
大根の端を箸で摘みますと蜘蛛の糸の様に天高く伸びて参ります。
次々に並ぶお料理に舌鼓を打ちながらおりますと、芸者衆の姐さん方にお渡しする「御祝儀」を渡しそびれます。
悪ノリする私は以前に姐さん方よりお聞きしました話を思い出しました。
『景気の良い時代は、お座敷が終わり置屋に戻ります帯を解きますと…、色っぽく抜きました襟足よりバラバラと祝儀袋が音を立てて落ちたものよ…!』
緊張しながらも姐さん方の襟足へ祝儀袋を運ぶ私の表情は「お巫山戯」の世界では『ご満悦な表情』と写りますね…(笑)
ならば「お座敷遊び」をご教示頂きましょう…!
『おひらきさん』
じゃんけんに負けますと、足を三歩ずつ開くというお座敷遊びに挑戦です。
日頃より運気が高いとは思えない私も、此処ぞとばかりに本番の強さ発揮です。
耐え切れずに前に倒れますと「罰杯」が待っています。
またもや「ご満悦な表情」にドヤ顔の私がパシャリと写されて仕舞いました。
「息子には見せられません…(R指定)」
こうして名残惜しく続いた大人の社会科見学は御開きになりました。
長年に渡り『牡丹』という看板をあげ芸事に精進為さって参りました女将さんは、『止め名』として『牡丹』姐さんより『向じま 千穂』さんの女将さんへと躍進為さいました。
女将さんおめでとうございます。