また紫陽花の季節になります。
もう25年以上も前の出来事ですが、必ず思い出す出来事があります。
高校生の頃の淡い思い出なのですが、紫陽花が咲くと目の辺りにすると一人の女性を思い浮かべます。
高校に入学し恋焦がれた一人の女性に想いを打ち明けた話です…。
実はその彼女が志望する高校を聞き、私も願書を出しました。進路指導の先生には無茶だと云われながら追いかけた高校でした。
受験では辛うじて合格し同じ高校に通うことになったのですが、入学することが精一杯で部活まではどうかと思う際に、彼女は私にこう伝えました。
『山田君はバスケには入部しないの…?』
彼女も入部することを聞き、迷うことなく入部届けを出しました。
そして私が恋焦がれている話を、彼女と同じ出身校の悪友に相談すると…!
『山田なら大丈夫だよ…!』と勇気付けられました。
そしてこの季節、部活の後に彼女を荒川の河川敷に呼び出し、想いを打ち明けました。
『ごめんなさい。山田君は友達でいて欲しいの…!』と呟かれました。
『ごめんね…!』と言い残し、夕陽に向かい私は走り出すしかありませんでした。
失恋です。
翌日は母に持たされた弁当を持ち、学校に向かう途中で彼女の顔と悪友達の顔が浮かび…、
いつの間にか電車に乗り込み『逃避行』に旅立ちました。
JRで千葉まで行き外房線に乗り換え、当ての無い旅の始まりです。
大原に差し掛かり、車窓から見えた『紫陽花』に彼女の表情を思い浮かべ切なくなりました。
やがて千葉の海原に心を洗われ、終点の上総小湊駅にて電車を降り駅のホームで母の弁当を食べました…。
太平洋の碧い海原に臨み、心癒され始発の内房線に乗り帰途に着きました。
いつもの時間に家に戻った私は、まるで何事も無かった表情を気取り自分の部屋に飛び込みました…!
しかし学校をサボった私を心配してか…?
いや昨日の私の恋の行方を興味本位に悪友達は家を訪ねました。
『何サボっているんだよ…?』
本当は昨日の告白の結果が聞きたいくせに…。
今日の『房総半島一周』の話と恋の行方を語り、実家のラーメンを美味そうに頬張る友情に助けられました。
彼女はやがて私が組んだバンドのベーシストの恋人となり、今でも夫婦として仲むつまじくいます。
あれから25年以上経つ今でも『紫陽花』を見ると、あの日の碧い海原と美味そうに食べる悪友の顔が思い起こせます。
今でも事ある毎に話題にされ、冷やかされている四半世紀ですが…、遠い切ない思い出を呼び戻してくれる『紫陽花』が咲き始めました。