日中はまだ暖かい陽気なのですが…、日が暮れると秋という装いに変わり肌寒く感じます。
こうした季節になると温かいものが食べたくなり、思い描くのは『おでん』であります。
昨日の定休日は息子と二人で過ごしました。
『久しぶりの男二人の時間をどう過ごそうか…?』と考え、『おでんを食べに行こうか』と提案しました。
私にとって『おでん』という響きは、公園に屋台を引き売りに来ていたおでん屋さんでしたが、大人となり『おでん』の崇高な世界を覚え、老舗の味に魅せられてしまいました。
家庭で炊かれた『おでん』とは別物であり、精魂込めてそれぞれの素材を炊き、それぞれの旨味を一つの鍋に出合わす素晴らしさがあります。
そのお出汁には伝統の味を守り続ける老舗のこだわりがあり、まねの出来る世界ではありません。
浅草の老舗『大多福』さんに息子と二人出掛けました。
まだ早い時間帯に伺い、混み合う前にと思いながら開店時間にお邪魔しました。
白木のカウンターに大きな銅鍋でクツクツとおでんが出迎えて下さり、旦那さんが私たち二人をカウンターに通して下さいました。
何度かお邪魔させて頂いているのですが、まさか小学校3年の息子をカウンターに通して下さるとは夢にも思いませんでした。
お蔭さまで念願の倅と二人、老舗のカウンターデビューすることが出来ました…(感無量)
『お刺身が食べたい』との息子の要望に、板長さんが応えて下さり彩り美しくお刺身を盛り付けて下さいました。
『美味しいね…!』と言葉を漏らす息子を誇らしげに、親子二人の大好物の『茶碗蒸し』をそれぞれ注文させて頂きました。
いよいよカウンターで『お好みでおでん』を頂くことにしましょう。鍋の前に陣取っているにもかかわらず、お品書きに目を通そうとする息子に思わず『野暮な男だねぇ~、せっかくなんだからお品書きなどに目を通さず、目の前にあるお鍋から好きなものを頂戴しな…!』と隣り合わせたお客様に『クスッ』と微笑んでいただきました。
『はんぺん・昆布・大根』と発する注文に、『なかなか粋なところを…。』と誇らしげに思い、樽酒のお燗が進んでしまいました。
さすがにまだ子供です。『お父さん、お腹いっぱいだよ。』との二皿を平らげた息子の表情を覗き込みながら、私は茶飯をいただき、薬味をのせお出汁を掛けていただき『さらさら』っと頂戴しました。
そして念願の『壺入りのおでん』をお土産に頂戴して、息子との水入らずの時間を過ごす時間を過ごすことが出来ました。
大多福さんの旦那さん、粋な計らい本当にありがとうございました。
やがて大人となり、自分の懐でお邪魔するようになった際も倅のこと宜しくお願い致します。